北ア常念山脈(長野) 蝶ヶ岳(2677m) 2022年11月26日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 3:04 三股駐車場−−3:17 林道終点−−3:30 吊橋−−3:40 力水−−3:47 ゴジラの木−−4:35 まめうち平−−5:10 蝶沢−−6:29 ハイマツ帯で防寒装備着用 6:37−−6:48 蝶ヶ岳−−6:56 大滝山分岐(休憩) 7:08−−7:40 蝶沢−−8:03 まめうち平−−8:28 ゴジラの木−−8:31 力水−−8:35 吊橋−−8:41 林道終点−−8:50 三股駐車場

場所長野県安曇野市
年月日2022年11月26日 日帰り
天候曇時々雪後曇後雨、森林限界以上は南西の爆風(たぶん20m/s以上)
山行種類プチ雪山
交通手段マイカー
駐車場三股の駐車場(第一駐車場)を利用
登山道の有無あり
籔の有無無し
危険個所の有無無し
山頂の展望晴れれば大展望
GPSトラックログ
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コメントおそらく今年最後の北アルプスで11/30の林道冬季閉鎖直前に蝶ヶ岳へ。寒冷前線接近で強風予報で最後まで風を避けられる蝶ヶ岳を選択したが、ハイマツ帯に入ってからは私が体験した中では過去最高レベルの強風でトレースから押し出されたり写真撮影すら困難な状況で山頂で休憩するどころではなかった。下山時にこの時期で標高2000mなのに雪ではなく雨が降り始めて本降りとなり、まさかの傘の出番となった。下山時にすれ違ったのは10人程度で、他に雨で途中棄権が3人いた。


東天井岳〜中天井岳の稜線。雪煙の上がり方で風の強さが分かると思う


夜中3時に三股駐車場出発 林道終点の登山指導所
力水は全く凍っていなかったのでかなり気温は高め ゴジラの木
標高1700mで僅かに雪が登場 まめうち平
まめうち平の下りでまとまった雪が登場 雪に完全に埋もれた蝶沢
標高2330m付近でアイゼン装着 午前6時過ぎの東の空
常念岳に雲はかかっていなかった ライト不要な明るさになったのは午前6時10分頃
大滝山分岐。大滝山方面にトレース無し 大滝山分岐から蝶ヶ岳方面
ハイマツ帯に出る直前に厳重に防寒装備装着 蝶ヶ岳ヒュッテ。爆風で写真がブレている
雪に覆われたテント場。ここだけは風が比較的弱い 蝶ヶ岳山頂。ここまでの稜線も爆風
蝶ヶ岳から見た西半分の展望。槍穂は雪雲に覆われる
蝶ヶ岳から見た東半分の展望。山頂付近にかかる雲が写っているが安曇野は比較的雲が少なく天気がいい
風が弱い大滝山分岐まで下って休憩 大滝山分岐から北東を見ている
標高2500m付近から見た常念岳。風の強さは見えない 標高2400m付近
蝶沢 蝶沢付近から雨が降り出した
標高2000m付近の処理された倒木 まめうち平
雨の中、途中撤退した男性 林道終点にはこれまた途中撤退した男女が雨宿り中
三股駐車場。断続的に雨が降っていたが回復傾向


 長野県内では11月いっぱいで冬季通行止めになる道が結構な数あり、北アルプスの登山口に通じる大半の道は12月に入ると冬季通行止めとなる。今週末が北アルプスに簡単にアクセスできる今年最後の週末であり、最後のチャンスを有効に生かすにはどこに出かけるべきか考えた。予報では土曜日午後から日本海の寒冷前線が南下して本州を通過し、土曜昼から日曜早朝くらいが北アルプスで雨や雪が降るタイミングであり、土曜朝ならまだ雨は降る前だ。ただし前線が近いため標高3000mでの風速は平均風速で20m/s近い南西の爆風予報。3000mの予想気温は-2℃くらいなので体感温度は-20℃くらいになる計算。風速から考えても行動に支障が出るレベルであり、長時間稜線歩きが必要なコースは避けるべきだろう。こんな時の出番が蝶ヶ岳。山頂直下まで稜線で風がブロックされるため最適だ。

 ネットでの予報は複数を確認しているが、今回は悪い予報では蝶ヶ岳等の北ア南部で雨のものもあったが、いいものでは全域でお昼過ぎまで晴れの予報。前線は北から降りてくるのでおそらく雨は降らないと判断したが、出発時に念のために傘を持つことにした(この判断は正解だった)。

 金曜日夕方にネットで直近の蝶ヶ岳登頂記録を探したら金曜日の記録を発見。これでトレースがあることが確定しラッセルの心配はなし。木曜日、金曜日と下界で晴れたので積雪が増えることも無いので安心して登れる。

 金曜夜の三股駐車場には先週と違って3台の車があった。車中泊なのか、それとも山も上で冬季小屋宿泊なのかは不明。上空は満天の星空だが気温は高めで車中泊でもそれなりに快適だった。今回はゲート近くに駐車したら隣に車がやってくることはなく安眠できた。

 山頂到着は午前7時を目標として午前3時に出発。私の足なら通常なら3時間半で山頂に立てるが、積雪があるので時間がかかることを考慮しての時間だ。駐車場をぱっと見た感じでは車の数は10台程度。駐車場でも少しだけ風が感じられ、予報通り稜線では相当な風だろう。

 ゲート横を抜けて林道を歩き始めると前方遠くに光が見えた。この時期に私より僅かに先に出発した登山者がいるとは驚きだ。歩き出しの気温は高くて先週よりは確実に暖かい。林道歩きを終えて吊橋を渡った先で半袖に変身。最終水場の力水で先行の男性に追いつく。男性は水汲み中でザックの大きさからすると泊まりかもしれない。水場は周辺を含めて全く凍っていなかった

 ライトの光で歩いていると肌では感じないちょっとの雨や雪でもライトの光が反射して存在が目立つが、今日は僅かながら雨が落ちているようだ。樹林の中なので本当の降りの強さは不明であるが、おそらく微かであろう。頭上を見ると樹林の隙間から所々で星が見えていた。雨よりも風の方が気になり、まだ谷底なのに木のざわめきが大きい。これまで強風時に何度も蝶ヶ岳に登っているが、その中でも今回が標高が低い場所で最も風が強いように思えた。行先候補の中には燕岳があったが、あちらは冬道に入ってから山頂までずっと稜線歩きで南西の風がもろに吹き付ける地形であり、今回の選択は正解だった様だ。雨粒はいつの間にか見えなくなっていた。

 標高1700m付近で僅かに雪が現れるがすぐに消えて、尾根に乗ってぐんぐん高度を上げる。まめうち平を過ぎて緩い下りで再び雪が現れるが、これも水平移動に変わると同時に消えてしまった。雪が連続するようになるのは標高2000m前後からで、木の階段の側面は水で濡れたように見えるが実際にはテカテカに凍っていた。気温は高めとは言っても標高2000mを越えると気温は0℃以下らしい。階段の上面も凍っているが登りではまだ滑りにくいのでアイゼン無しで歩けるが、下りはアイゼンが必要だろう。

 蝶沢は完全に雪に埋もれて流れは無し。さらに高度を上げて積雪量が増えてくると踏まれた雪は凍ってはいないものの滑りやすく歩行スピードが落ちてきたので、標高2330m付近で軽アイゼンを装着、格段に歩きやすくなった。この付近より上部では木の階段の踏み板の上には雪が積もっているのでアイゼンで傷付ける心配はない。風が出てきたのでアイゼン装着と共に防寒着としてウィンドブレーカとネックウォーマを装着。これでしばらく大丈夫だろう。

 ネットの記録で見た通りトレースはしっかりしていてラッセルは不要で大助かりだった。このコースは北斜面が続いて雪が溶けにくいので多いところで積雪量は30cm程度、平均で20cm程度あったと思う。強風で新雪が飛ばれてきてトレースが埋もれた場所ではラッセルがきつかった。完全な新雪なら軽くて支障にならないと思うが、この雪が降ったのは少なくとも3日以上前のはずだ。

 周囲が明るくなり始め、樹林が開けた場所から常念岳が見えると山頂は雲の下で姿を見えていたのはいい傾向。これなら蝶ヶ岳山頂も雲の下だろう。大滝山分岐では大滝山方面のトレースは皆無であった。山頂は間もなくだが頭上低くにガスが流れていく。ここでは風はほとんど無いが稜線は強風に間違いないだろう。雪に埋もれたお花畑(雪原)を抜けて谷間からハイマツ帯に出る箇所で防寒防風装備を追加。ゴアのズボンを履いて上半身は長袖シャツとダウンジャケットを着る。アイゼンを履いているので一度アイゼンを脱いで再び装着したので時間がかかった。フリースの手袋の上にはオーバーミトンを付けた。

 ハイマツ帯は半分雪に埋もれていて、予想通りここに入ると爆風に遭遇。明瞭なトレースがあるが強烈な横風で体が右に押し出されてトレースから外れることしばしば。変な足跡を雪の上に残してしまった。今は雪は降っていないが強風で積もった雪が飛ばされてきて顔に当たって痛い! 耐風姿勢で動きが取れなくなることも。山頂まで僅かな距離しかいないが山頂に到着できるのか怪しいと思える状況であった。これまで蝶ヶ岳に登った中で稜線に出る前にこの強風は体験したことが無く、稜線での風の強さが予想できなかった。

 最初の超強風帯を抜けてテント場に到着。当たり前だがテントは皆無でトレースは全て山頂へと続いていた。ここは稜線の東直下で西寄りの風は直接当たらないが、それでもかなりの強風である。西へ向きを変えて稜線へ出るとよろけるほどの爆風であったが、先ほどの超強風帯と同程度の風速であり、風のタイミングを見ればどうにか進めそうであった。しかしここから山頂までは風を避けられる地形は無いので覚悟が必要だ。写真撮影しようにもデジカメを取り出して構えることが困難なほどの強風であり、撮影は諦めて山頂に立つことを優先した。

 ストックを併用して風上側に大きく体を傾けながら登っていくと、最も風が強いのはテント場から稜線に出た付近であり、山頂に近付くと風が弱まるのが体感できた。まあ、弱まると言っても風速は15m/sを越えているだろうが。肌が露出して風がもろに当たる顔面は痛いほどの冷たさで、このまま長時間晒されると凍傷になりそうだ。フリースの手袋+オーバーミトンで固めた手で顔を覆いながら山頂に到着した。

 山頂はこれまでよりは風が弱く体が飛ばされそうなレベルではなかったが、ストックをそのまま雪面に置くと飛ばされそうに思えるほどで、ストックを雪面に深く突き刺して手を空けてデジカメを取り出して写真撮影。穂高〜槍の稜線は雪雲に覆われてその姿は見えず、常念岳は時々雪雲から姿を現すがギリギリの位置であった。東側の安曇野は雲が少なくて晴れ間もあるようで、今のところは雲があるのはアルプス界隈だけらしい。志賀高原は北部の山並みは見えているが中央部から南部は雲の中。それより南側は蝶ヶ岳山頂から風が巻き込むのか、山頂のすぐ上を流れるガスが視界を遮っていた。

 山頂は休憩出る状況ではないので写真撮影だけして即退散。帰りもテント場に下りる付近は猛烈な爆風で背中を押されてトレースのある方向とは別の場所に勝手に足が出てしまうほど。テント場で一息ついてからもう一つの爆風帯を横断してハイマツ帯から谷間に下ってやっと弱風帯に入って大滝山分岐付近で休憩。ここから見える常念岳には日が当たってガスもかかっておらず穏やかそうに見えるが、爆風は目に見えないのでしょうがない。

 下山中の最初の遭遇者は水場で水を汲んでいた男性であった。次の登山者とすれ違い、雪に埋もれた蝶沢に出ると雨が落ちてきた。常念岳は雲に隠れて見えなくなり、日が当たる下部斜面には虹が出ていた。雨は一時的なものだろうとたかをくくっていたが予想に反してずっと続いて、いくら樹林帯の中を歩いているとは言え体が濡れるようになってきたので、途中からザックをかき回して奥底から傘を取り出した。まさかこんな時期に標高2000m以上で雨とは。どうせなら雪の方が体が濡れなくていいのだが。

 雨の中でも登ってくる登山者は数人いて、まめうち平までに10人程度とすれ違った。この頃には本降りの雨に変わっていた。蝶ヶ岳山頂だと湿った雪だろうか。まめうち平以降は登ってくる登山者はいなかったが下っている登山者はいた。と言うことは雨で登頂を断念した人である。林道終点では雨宿り中の2名の登山者もいた。予報では寒冷前線の通過はお昼過ぎの筈で、今の雨は局所的なものの可能性があり、もしかしたら少し待てば雨が上がるかもしれない。でも予報ではお昼過ぎから前線の雲がかかって雪になるとのことで、雨が降っていない時間は短いかも。

 林道を下っていると晴れ間も見えたり雨が降ってきたりと不安定な天候であり、駐車場に到着しても雨は降ったままであったが、山側の雲が切れて雪が付いた蝶槍の稜線が見えていた。駐車場にはこれから出発する人の姿が見えたが出発には微妙な時刻であり、今から登るか悩んでいるようだった。まあ、当然だろう。トイレを使おうとしたら林道閉鎖前に既に戸締りがしてあって入れなかった。

 三股駐車場からは稜線が見えていたが、安曇野まで下ると北アルプス方向は広範囲に雲に覆われ、見えているのは白馬岳周辺の後立山北部だけであった。蝶ヶ岳の天候が回復したのか、また悪化したのかは下界からは分からなかった。

 

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